仲裁裁判決を無視する中国、比も2国間協議に同調
南シナ海仲裁裁判。これは2016年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が九段線とそれに囲まれた海域に対し、中国が主張してきた「歴史的権利」について、無効を主張するフィリピンの言い分を全面的に認めたものです。
「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」との判断でした。
ひと言でいえば、南シナ海で人工島を造成し軍用機の滑走路を造り、領有権を主張してきた中国の主権主張を全面的に否定した内容でした。
ところがこの判決には強制権を発動する方法がない。まさか中国に対し、フィリピンが自国の軍隊を正面からぶつけるわけにはいかない。実行したところで「鎧袖一触」を免れることはできないでしょう。
中国は「当事国同士の話し合いによる解決」を口にし、仲裁裁の判断を無視してきた。それに対しフィリピンと同盟関係にあるアメリカが、南シナ海南沙諸島海域に軍艦を派遣し、「航行の自由」作戦と称して中国に圧力をかけるなど、フィリピン擁護に動き始めた。5月24日、トランプ政権初の作戦も実施された。
ところがここで、フィリピンも中国との2国間での話し合いを発信し始めたのです。これで第三者が口をはさむ余地がなくなった。日米の介入を排斥する、これは中国が一番望んでいた解決法です。
中国とフィリピンはまず19日、中国貴州省貴陽で、南シナ海問題をめぐる2国間協議メカニズムの初会合を開いた。双方の衝突防止のほか海難救助やエネルギー開発分野などでの協力について意見交換したとみられる。ただ領有権問題の根本的な解決につながる進展はなかったという。
協議メカニズムは昨年10月、習近平国家主席とフィリピンのドゥテルテ大統領との首脳会談後に発表した、共同声明に設置が盛り込まれていた。今後、年2回のペースで定期的に開催される予定だという。
フィリピン側から参加したサンタロマナ駐中国大使は会合後、フィリピンの漁民らに対する最近の中国側の対応などへの懸念から、フィリピン側の立場を説明したと強調。ただ同氏は「敏感な問題に触れた」とする一方、「中国側に押しつけることはしなかった」とも述べ、中国に配慮する姿勢も見せたという。
中国にとっては、日米などの介入を排除できたのは大きな成果には違いなく、この2国間協議の枠組みを恒常化させる構えだ。フィリピンのドゥテルテ大統領が協議に応じた背景には中国の圧力も考えられるが、投資やエネルギー共同開発などの実利を狙う自らの思惑があるとみられている。
しかし中国が、フィリピンの思う通りに動くとは考えかられない。南シナ海の領有権問題は根が深く、根本的な解決への道は極めて険しい。そこに今回の中比間の「棚上げ」で、領土問題は大きく後退するのではないか。「後悔先に立たず」。フィリピンにはこんな諺はないのだろうか。
「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」との判断でした。
ひと言でいえば、南シナ海で人工島を造成し軍用機の滑走路を造り、領有権を主張してきた中国の主権主張を全面的に否定した内容でした。
ところがこの判決には強制権を発動する方法がない。まさか中国に対し、フィリピンが自国の軍隊を正面からぶつけるわけにはいかない。実行したところで「鎧袖一触」を免れることはできないでしょう。
中国は「当事国同士の話し合いによる解決」を口にし、仲裁裁の判断を無視してきた。それに対しフィリピンと同盟関係にあるアメリカが、南シナ海南沙諸島海域に軍艦を派遣し、「航行の自由」作戦と称して中国に圧力をかけるなど、フィリピン擁護に動き始めた。5月24日、トランプ政権初の作戦も実施された。
ところがここで、フィリピンも中国との2国間での話し合いを発信し始めたのです。これで第三者が口をはさむ余地がなくなった。日米の介入を排斥する、これは中国が一番望んでいた解決法です。
中国とフィリピンはまず19日、中国貴州省貴陽で、南シナ海問題をめぐる2国間協議メカニズムの初会合を開いた。双方の衝突防止のほか海難救助やエネルギー開発分野などでの協力について意見交換したとみられる。ただ領有権問題の根本的な解決につながる進展はなかったという。
協議メカニズムは昨年10月、習近平国家主席とフィリピンのドゥテルテ大統領との首脳会談後に発表した、共同声明に設置が盛り込まれていた。今後、年2回のペースで定期的に開催される予定だという。
フィリピン側から参加したサンタロマナ駐中国大使は会合後、フィリピンの漁民らに対する最近の中国側の対応などへの懸念から、フィリピン側の立場を説明したと強調。ただ同氏は「敏感な問題に触れた」とする一方、「中国側に押しつけることはしなかった」とも述べ、中国に配慮する姿勢も見せたという。
中国にとっては、日米などの介入を排除できたのは大きな成果には違いなく、この2国間協議の枠組みを恒常化させる構えだ。フィリピンのドゥテルテ大統領が協議に応じた背景には中国の圧力も考えられるが、投資やエネルギー共同開発などの実利を狙う自らの思惑があるとみられている。
しかし中国が、フィリピンの思う通りに動くとは考えかられない。南シナ海の領有権問題は根が深く、根本的な解決への道は極めて険しい。そこに今回の中比間の「棚上げ」で、領土問題は大きく後退するのではないか。「後悔先に立たず」。フィリピンにはこんな諺はないのだろうか。