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軍事戦略か経済戦略か? 目が離せない中国の 「陸海シルクロード」の実体

(前回のつづき)
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の話が、横道にそれてしまい申し訳ありません。今回、もうひと言書いておしまいにします。

中国は今、経済的にかなり厳しい局面を迎えています。まず、「正論」 6月号に掲載された産経新聞特別記者、田村秀男氏の記事です。
「BIS統計から、国際金融市場でどのくらい再建による資金調達がなされているのか、調べてみた。2014年は全世界で6740億ドルである。このうち、世銀、アジア開銀など国際金融機関の調達分は1387億ドルである。発展途上国全体では3427億ドルのうち、中国は1656億ドルと5割近くを占め、米国の1571億ドルを上回る。残高ベースでみた世界最大の債務国は米国だが、単年度の増加額でみれば、今や中国は米国をしのぐ世界最大の借金国なのである

さらに昨年から、正体不明の資金流出が加速しているという。景気の悪化、不動産バブルの崩壊、中国高官が自国に愛想を尽かし莫大な資金を海外に持ち出している、など色々原因があるようですが、現実に「中国は借金しないことには、対外投資戦略を進められないし、外準を大きく取り崩すしかなくなるのが実情」(同)ということのようです。

アジア開発銀行などの試算によると、2010~20年の間にアジアのインフラに約8兆ドル(950兆円)の投資が必要らしい。ヨーロッパ諸国ではこのインフラ建設の一大プロジェクト参加を逃したくない。そこで「バスに乗り遅れるな」と、競ってAIIB参加を表明したのでしょう。そしてアジアを中心に、その他のほとんどの国は、融資目当てなのです。金を借りたい途上国が、参加したいというのは当然です。

もしここに日本が参加したらどうなりますか。中国に次いで出資させられることは間違いない。しかし中国が出資する金額はいずれ公表されるでしょうが、それを完納したかどうか検証できるのでしょうか。国連分担金を考えてください。日本は何十年も200ヵ国近い中で2番目の金額を負担してきた(1位はアメリカ)。しかし日本の完納に比べ、アメリカは滞納続きでしたよね、たぶん現在も。
さらにAIIBでは常任理事会も設けないという。決定事項をメールで理事に送信する。要するに、事後承認でしょう。融資の明確な基準もまだなさそうです。そうなると中国がどれだけ実際に金を出すか、連中の匙加減一つでしょう。日本の出資金が中国の意のままに使われるのではないか、と懸念するのは当然ではありませんか。

ところで私は4月17日のブログで、AIIBでいちばん気になる点を書きました。
「日本とアメリカは設立に警戒感を抱いています。ことにアメリカは、中国がインフラ投資を通じてアジア諸国を取り込み、海陸のシルクロードとして勢力圏拡大に利用するのではないかと警戒しているのです」
「AIIBは「貧困削減」の使命を世界銀行やADBに委ねるとして回避しています。しかもそれに代わるビジョンを提示していない」と。

ここで注目すべきは、中国の「一路一帯経済圏戦略(海陸の新シルクロード)」。中国から欧州やアフリカまで陸海路で結び、かつてのシルクロード沿いに新しい経済圏を生み出そうとする習近平政権の看板政策です。
しかし中国は資金がなければシルクロード作戦を進めることができない。AIIBは世界銀行(WB)やアジア開発銀行(ADB)と同様、債券を発行して資金を集めるのでしょう。

ところが現在の状況では債権の最優良格付け、トリプルAを獲得できそうにないという。トリプルAを獲得できなければ、リスクが高いわけですから金利が上がる。そうなると融資先にも高金利で融資しなければならない。
さらにインフラを建設する借り手国への融資基準が甘ければ、回収に不安が残る。英国紙は、中国が外貨準備を充当して返済を保証することを期待していたようですが、田村氏は中国自体の厳しい現実を示して 「(AIIBの)ずさんな債務保証に応じるはずがないだろう」 という。AIIBのことはそちらで解決せよ、ということなのです。そうなると、日本はどこまで 「金をドブに捨てる」 ことになるかわかったものではない。

さらに 国家として何より注視 しなければいけないのが、この 「海陸新シルクロード」 だと私は思います。どうしてか? 中国は軍事戦略と経済戦略の区別がきわめて曖昧だからです。
海のシルクロードと名付けた東アジアとヨーロッパをむすぶ海上の交易路。中国の華南を発して、南シナ海、インド洋を経て、ペルシャ湾ないし紅海をとおって地中海につながる。中国の艦隊が、必要に応じて港を利用できるように諮ることは難しくない。

一例を挙げましょう。習近平国家主席は2013年11月、アジアにおけるインフラ整備を支援するために400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明。この巨額資金を投じ、アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカを通る陸路や海路の交易ルートを開拓する計画を明らかにした。その後、ギリシャ国内の最大港湾・ピレウス港の67%を中国国営海運会社が買収に乗り出していた。

当初、本年1月にも決まる予定だったが、ギリシャ新政権がこの計画の凍結を発表したという。それが事実なら、まことに喜ばしい。ギリシャは欧州への入り口となる要所。中国の大規模交易ルート開拓計画「シルクロード」の海路は、大幅に頓挫したことになる。もし中国国営企業の買収が成功していたら、ヨーロッパへの一大橋頭堡として、軍事利用できることになっていたでしょう。一朝有事においては、中国とその同盟国以外の艦船を締め出すことができる。中国は「新」ノルマンディー作戦でも考えていたのではないかと疑いたくなるのです。陸路においても同じですよ。

この実態を見て、習近平主席の「魂胆」が読めなけばおかしい。「100年遅れてやってきた帝国主義国家」が中国です。これを決して忘れないでいただきたいのです。(おわり)

プロフィール

村 岡 長 治

Author:村 岡 長 治
出自:兵庫県姫路市
現在:埼玉県富士見市
仕事:特定社会保険労務士、行政書士

筑波大学付属駒場高等学校卒業後、早稲田大学理工学部に学ぶが、家業を継ぐため学業途上で帰郷。
現在、川越・ふじみ野・富士見方面で、社会保険労務士・行政書士業をやっています。

「村岡労務行政事務所」のホームページもご覧ください。

両士業の支部内で、勉強会などを持てるといいと思っています。信頼できる同志との連携を深めたい。

お客様とは互いに信頼でき、長続きする関係を築いて行きたい。

趣味は酒、旅行、絵画・音楽・書の鑑賞など。子供たちも独立して、いまは夫婦2人です。

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