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「個人の尊厳」 否定か? 生活保護費受給者への監視条例

兵庫県小野市の「福祉給付制度適正化条例」 が27日、市議会で可決・成立しました。「生活保護費の不正受給や、過度のギャンブル等に浪費している生活保護費受給者を見つけた場合は、市に情報提供することを『市民の責務』とする」としたもの。兵庫県弁護士会や保険医協会などでは「憲法違反の恐れがある」として廃案を求めているという。

たしかに生活保護費の不正受給などは許されることではありません。かつて某お笑いタレントが、世間の基準から見るとはるかに多額の収入がありながら、母親や親戚にまで生活保護を受けさせた、あるいは扶養義務を果たさず受給を是認したという事件がありました。私もこのブログでひとことコメントを書いた覚えがあります。

しかし今回は、条例そのものに問題があり過ぎるのではないか。
まず、市に情報提供することを「市民の責務」としているというが、市民がなぜ突然、そんな責務を負わされなければならないのか。責務とは責任と義務であり、果たさなければならない務めのことだろう。

この条例の第5条第2項に「市民及び地域社会の構成員の責務」 として、「市民及び地域社会の構成員は、地域活動で得た人と人とのつながりを活かし、相互に助け合い協力して、要保護者を発見した場合は速やかに市又は民生委員にその情報を提供するものとする」 とある。この「地域活動で得た人と人とのつながりを活かし…」ということは、該当者だと疑い得る人がいた場合には知り合いに聞いて回れ、ということか。


まず第1に疑問に思うのが、生活保護費受給者の氏名等を市民に開示しているのか。開示しているなら個人情報保護の上から大きな問題になる。開示していなければ、生活保護を受給している人を、どうやって特定するのか。

生活保護費を受給できるのは、資産を持っていない人に限られる。多額の現金・預金がある人は生活保護を受けられないし、不動産・車などを所有している場合は、まず処分して生活費に充てなくてはならないはずだ。
他人の現金・預金の内容なんかわかるはずがない。とりあえず、家や車を持っている人は生活保護を受けていないと考えてよいのか。外見で判断するしかなくなるが、それ以外の方法は思いつかない。

すなわち家も車も持っていない人たちがパチンコ、過度の飲酒、風俗(市の話ではこれも含まれるという)などで浪費しているようなら「市民は目を光らせて通報せよ。それが責務だ」というわけだ。ことに資産を持たなくても生活保護を受給せず、自力でやっている人が大多数ではないのか。


こんな制度では、生活保護を受給していない人が、たまたまパチンコをした、一杯飲んだというだけで通報されたりしてはとんだ迷惑だ。しかも通報する市民にとっても、受給者が「しょっちゅう浪費」しているのか、「たまたま」なのか、わかるはずはないだろう。

さらに生活保護を受けているということで、日常生活を市民から監視される、そんな差別にも堪えるべきだということになるが、この点はどうなのか。こんなことでは個人の尊厳も何もあったものではない。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(日本国憲法)ことを否定していると思うがどうか。
それより、まず市民にどういう資格を与えて監視させるのか、この点を明らかにするべきだろう。


次いで、不正受給と浪費は根本的に違うがその点はどうか。不正受給は受給可能な資格・要件を満たしていない者が申告内容を偽り受給することで、当然、詐欺罪や所得税法違反の虚偽申告に該当するはずだ。これを浪費と同列に並べて扱うのは間違っているだろう。

およそ人口5万人の同市で生活保護受給者は121世帯(毎日新聞)という。0.31%だそうだ、世帯単位だからこういう数字になるのだろう。1万分の31という数だ。その中でも、不正受給はごくわずかなはずだ。いったい5万人市民のうち、何世帯ぐらいだと予想しているのか。

そのわずかな不正受給をあぶり出すために、「市民総スパイ条例」 の施行などもってのほかではないか。そもそもこれは、市役所や専門の担当者がやる仕事だろう。それを市民に押しつけて疑心暗鬼を煽るなど、市民に尽くすべき連中のやることではない。私は責任を分散して市民に押しつけようとする“責任逃れ”以外にはないと思う。いったい何を考えているのか。

蓬莱務同市市長は「監視ではない、見守りだ」と言っているらしいが、もう少しまともな言い訳を考えたらどうか。こんな条例を施行するということは、生活保護を受給する以上「個人の尊厳」を侵されても堪えなければいけない、ということか。上に立つ者はあらゆる影響を考えるべきだ、思い付きで事を運んではいけないということです。久しぶりにこんなくだらない条例を目にした。あきれ果てた。
プロフィール

村 岡 長 治

Author:村 岡 長 治
出自:兵庫県姫路市
現在:埼玉県富士見市
仕事:特定社会保険労務士、行政書士

筑波大学付属駒場高等学校卒業後、早稲田大学理工学部に学ぶが、家業を継ぐため学業途上で帰郷。
現在、川越・ふじみ野・富士見方面で、社会保険労務士・行政書士業をやっています。

「村岡労務行政事務所」のホームページもご覧ください。

両士業の支部内で、勉強会などを持てるといいと思っています。信頼できる同志との連携を深めたい。

お客様とは互いに信頼でき、長続きする関係を築いて行きたい。

趣味は酒、旅行、絵画・音楽・書の鑑賞など。子供たちも独立して、いまは夫婦2人です。

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